森絵都「永遠の出口」

永遠の出口

永遠の出口

両親と姉を持つ女性の、小学四年生から高校卒業までのあれこれといろいろを描いたはなし。

父親が浮気したり姉が振られたり、母親にたてついて外泊するようになったりバイトをしたり、時間軸にそっていろいろな事柄がレトロスペクティブに述べられる。一人称である「私」はずいぶん物わかりがよく、その「私」が当時の「私」の気持ちを代弁しつつ解説してゆく。そのひねくれた雰囲気が面白くはあったのだが、なにか気持ちが乗らない部分が多い。それはまさに私が経験し得なかった「共学」というものの魔力に、共感が物理的に無理だったためでもあるのだが、少し「あたりまえ」とか「普通の」気持ちに作者が寄りかかりすぎているところもあるのだろう。つまり、意外と物語が凡庸にすぎ、それ故に現実感が薄い。このように人は思い出さないだろうし、劇的でもないだろう。これに比べると「いつかパラソルの下で」は劇的にすばらしい。なんで直木賞とれないのかなあ。