石田衣良「骨音 池袋ウエストゲートパーク3」

骨音―池袋ウエストゲートパーク3 (文春文庫)

骨音―池袋ウエストゲートパーク3 (文春文庫)

例のアレの第3弾。どのようなシリーズも、長期化に連れキャラクター・物語とも定型化し、いろんなイメージとエピソードの寄せ集め感が出てくるが、少しこの巻では持ち直している雰囲気。一話目の「骨音」は面白くない。ストーリーの骨格は「ボーンコレクター」だし、登場人物の出会い方はあまりに予定調和で馬鹿馬鹿しいくらいに現実感がない。お約束の「泣き落とし」も全然泣けなくてよくわからない。二話目の「西一番街テイクアウト」は、おそらく停滞した物語の打開策として主人公の母親が登場する。物語自体はへーっていう感じで、そんなにうまくいくんですかという感じだが、でもちょっと泥臭くて悪くない。三話目の「キミドリの神様」は地域通貨の偽造を軸とした話で、ようやく雰囲気が出てくる。ちょっと急ぎ足だが、予想しない物語を久しぶりに読めた。最後の「西口ミッドサマー狂乱」はレイブとドラッグの物語でありきたりというか手垢がついた物語だが、入り組んだ構成が結構気持ちよかった。登場人物達が「レイブとは、、」とか語り出すのが興醒めだが。どうせなら山口雅也氏くらいまでに掘り下げれば良いのに。あまり知らないのか。また、主人公がどんどんオヤジくさくなってゆくのが気になる。音楽を聴くのはいいが、渋い趣味というよりかは、LEONとかよんでそうなおじさんの趣味だよ。