化野燐「混沌王 人工憑霊蠱猫03」

渾沌王 人工憑霊蠱猫 03 (講談社ノベルス)

渾沌王 人工憑霊蠱猫 03 (講談社ノベルス)

化け物を召還するために設計された一大学園都市で、その召還を阻止するためにいろいろな登場人物が奮闘する群像劇の第三弾。今回は位置づけ的にいままで謎のキャラクターであったスキンヘッドの若者が一人称で語る話。

この三巻まで読んでようやくわかったのだが、1巻から3巻まではほぼ同じ時間帯の出来事をそれぞれ異なった登場人物の視点から語っている。これはなかなかよく考えられたシステムで、どうもいままでかゆいところに手が届かないような、妙にわからなくて気になるところが今回一気に説明されていてとても気持ちがよい。おそらく欠点とすれば突然この巻から読んでも全く物語が理解できないということだが、作者はそのような読まれ方を想定せず書いているのだろう。そのやり方はずいぶん成功していると思う。ストーリー自体は基本的に化け物がうろつくアブない雰囲気の話で、一歩間違うと単なるオカルト話になってしまうのだが、あまり道を踏み外すことなく物語としての面白さを担保しながら、荒唐無稽な世界を注意深く作り上げていると思う。しかし主人公の正体に関するギミックは正直その意味が全くわからなかったが。物語としては一旦区切りがついてしまったが、このさきいったいどのように展開するつもりなのだろうか。「ドラゴンボール」的展開にならないと良いのだが。