大倉崇裕「ツール&ストール」

ツール&ストール

ツール&ストール

就職活動中の大学生白戸修が中野駅北口近辺で巻き込まれる騒動と顛末。5話収録。

最近文庫で別タイトルになってしかも一話おまけが付いて発売されている大倉氏のデビュー作。文庫を買おうと思ったが、たった一話のために数百円を出すのが惜しくなり、昔買った単行本をもう一度読んだ。この人は落語探偵小説よりも、こっちのダメ人間系スラップスティック小説の方が断然好きです。「無法地帯」もそうだったが、なんでこんな事を知っているのかと思ってしまうくらい馬鹿馬鹿しくてつまらないことを力一杯描ききり、非常に爽快。この作品も、無駄にスリや万引き、捨て看板などの軽犯罪についての必要以上に細かい描写が、馬鹿馬鹿しい筋立てに力強さを与え、異常なグルーブ感を醸し出している。文章もとっても上手いやね。落語シリーズみたいに変に肩に力が入っていなくて良い。やっぱり文庫で追加されたエピソードが気になるので、そのうち立ち読みでもしよう。