米澤穂信「クドリャフカの順番」

クドリャフカの順番―「十文字」事件

クドリャフカの順番―「十文字」事件

三日間続く学園祭の初日、犯行声明とともにたわいもない物品が連続して盗まれるという事件が発生し、同時に古典部には大量の文集の在庫を抱えてしまうという事件が襲いかかる。この二つの事件が、学園祭の進展とともにほぐれつつ解きほぐされてゆく話。

学園祭、文化系、文集、在庫、ポスター、売れ残りと、個人的なツボを直撃する設定でそれだけで楽しい。「氷菓」、「愚者のエンドロール」につづくシリーズ3作目だが、全体として落ち着いてきた感じで、安心して読める。正直、一人称が「俺」である小説はかなりの確率で生理的に受け付けないのだが、本作品は、四人の主人公がそれぞれ一人称で語るという構成のためか非常に楽しめた。この語りの方法には、物語全体の構成にも非常に重要な役割を果たすちょっとした仕掛けが仕込まれていて、最後には手品のタネ明かしのような、爽快に騙された感覚が残った。冷静に考えると犯行動機や方法は持ってまわりすぎている気がしてなんだかよく理解できなかったり、文章もめちゃくちゃ切れがあるとか異常な雰囲気を漂わせているということは全くないのだが、そのような細かな(細かくはないか?)事が気にならないくらい学園祭の雰囲気を楽しんでしまった。これも上手さか。「犬はどこだ」が楽しみです。