柳広司「聖フランシスコ・ザビエルの首」

ザビエルの首 (講談社ノベルス)

ザビエルの首 (講談社ノベルス)

マイナーオカルト雑誌に寄稿する売れないライターがザビエルの首にまつわる記事を取材している間に、なぜかザビエルの生きていた時代、それもザビエルのすぐそばにいる人の意識の中に滑り込んでしまう。そこで4つの事件に遭遇し、その謎を解き明かしてゆく話。

このようにまとめると馬鹿みたいな話に聞こえるが、これはまとめ方が悪いのであって実際は非常に奇妙な風味に満ちた素敵な作品集。柳広司という人は極めて堅い芯を持つテーマを、饒舌な語り口とリズムの良い展開の中に巧妙に隠れさせ、読む人を引きずり込んだ上で突然襲いかかってくる。この作品も非常に重いのだが、入り口はあくまで軽く、勝手に作家の世界に引き込まれてしまう。文章は相変わらず艶があり上手。しかもおそらくこの人はやたらモティーフに対して勉強をしているようで、ディテールも細かければ作り上げられる世界も非常に厚みを持つ。いわゆる「推理小説作家/ミステリ作家」の中では、僕の知る限りもっとも質の高い作品を書かれている作家の一人だと思う。でも、絶対メジャーにはならないだろうな。。