山田正紀「謀殺の翼747」

謀殺の翼747 (中公文庫)

謀殺の翼747 (中公文庫)

東南アジアのP国で日本企業の汚れ仕事を請け負う一人の日本人と3人のP国人が、その日本企業に騙され米軍も関与する狂言ハイジャックを行うが、途中で気づいて無茶苦茶な仕返しをする話。

不可解なほど陰鬱なのだが、物語の調子はいつもの山田正紀らしくテンションが高い。またあまり意味も無く飛行機の操縦に関する記述が詳しいのだが、全く興味がないためむしろテンポが悪く感じる。基本的には虐げられている人々が騙されたあげく、最後に反撃に出てほとんど殺される話なのだが、所々に挟み込まれる挿話が外国人労働者の差別の問題を扱うなど妙に現実的で、単調な浪花節の世界に物語を収束させない。気持ちよく読み終わり、気持ちよく忘れそうな話だった。一番面白かったのは、これが1995年に中公文庫ででていることか。本の裏側に、極めてB級な粗筋がどこか格調高く書かれていて良い。