津原泰水「ペニス」

ペニス

ペニス

井の頭公園の管理所に一人で勤める男が、突然職場のロッカーに少年の死体を発見、それとともに不思議な電話や妖しい男や便所で練習するゲイのテノール歌手や逃げる女などが次々と登場と退場を繰り返し、混沌としたまま終わる。

いわゆる幻想小説だが、よくよく考えると今まで読んだ幻想小説と呼ばれるものには面白いものがなかった。で、これもあまり面白くない。ストーリーが成立していないため読み通すモチベーションがあがらず、充満する奇妙な雰囲気は独特だがあまり趣味ではない。いろいろな要素があまりに不愉快なこと自体はとても良かったのだが、描写が上手すぎて本当に気持ち悪い。笠井潔が解説でいろいろと難しいことを書いているが、ピンとこない。おそらくこの小説はあまり出来が良くないよ。「奇譚集」にもでてきたエピソードが散見されるし。この人には繊細で諧謔味にあふれた物語を書いてもらいたいなあ。それにしても「赤い竪琴」は素晴らしかった。