アーロン・エルキンズ「古い骨」

古い骨 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

古い骨 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

モン・サン・ミシェルのほど近くに位置する邸宅の主が、親族を突然招集した直後に事故死し、それに引き続いて地下室から第二次大戦ころのものと思われる人骨が発見され、たまたまフランスで講義をしていたスケルトン探偵ギデオン教授が巻き込まれる。

ストーリーとしては普通、推理小説マニアなら、あまりにも予想通りの展開に心が洗われる気がすることは間違いない。でも、いつも思うのだけど結局小説としての面白さは、ストーリーのひねくれ方とか推理小説としての新しさにあるのではない。特に後者に関しては、完全に作家の自己満足と業界の秩序に関わることなので、読者には全く関係がない。僕がこだわるのはやはり文章の巧みさ、物語の奥深さ、キャラクターの作り込み等であり、結局はきちんと時間をかけられてつくられたものかどうかというところである。その意味において、このシリーズは質が高い。いわゆる「観光地巡りミステリー」なんだけれどもそれはそれで祝祭的に楽しく、ひねくれたキャラクターも味があって良い。探偵のギデオンはきっぱりと間違った推理を行い訂正に追われ、ハワイから来たFBIの捜査官はくだらないこと以外はしゃべらない。これなら原書で読む価値はあるなあ。