東川篤哉「館島」

館島 (ミステリ・フロンティア)

館島 (ミステリ・フロンティア)

瀬戸内海の小島に建つ六角形の平面をした5階建てのタワー状の邸宅で、その中心部に設けられた螺旋階段の底部に館の主の3階以上の高さから落ちたとしか思えない墜落死体が発見される。そのまま事件は迷宮入りとなり、その半年後に関係者が再び館に招集されると、お約束の通りまたもや殺人事件が発生し、その場に居合わせた刑事と私立探偵が捜査を開始する。

私立探偵っていったいなんだ。町立探偵とか国立探偵とかも存在するのだろうか。それはさておき、一番最初のページにこの「館」の見取り図が示されているが、それを見ただけでだいたい趣向がわかってしまう。新本格以降の「館もの」ミステリーに面白いものはあったことが無いが、この作品もまたその轍を踏んでいる。面白くない理由としては以下の事柄が考えられる(論文調)。1)「館」の設計が異常、つまり建築の勉強不足。2)「館」のデザインがそもそも面白くない。3)「館」の説明が鬱陶しく、まるで建物案内文を読まされている気がしてくる。4)「館」以外の要素が魅力的でない。ただ、この時代に「館もの」の推理小説を書くという事自体がほぼ冗談のような行為であると言うことは作者も認識している可能性があり、特にこの作家は笑えない冗談を怒濤のごとく並べ立てるという、まさに悪い冗談のようなスタイルを確立している作家なので、むしろ「館もの」を笑い飛ばすつもりでこのような作品を書いているとも考えられる。でも、「密室に向かって撃て!」みたいな爽快な上滑り感は感じられなくて残念。結構本気で楽しみにしてたのになあ。