ジョージ・R・R・マーティン「タフの方舟 2.天の果実」

シリーズの第二巻にして完結編。今度は短編を4つ収録。

まず帯が良い。「イーガン、チャンがわからなくても、この本の面白さはわかります。」だって。確かにイーガンはそこそこ面白いんだけど無駄に理屈っぽい気がして肩が凝ったし、チャンに至ってはなんであんなに評価されているのか全くわからず、読み終わる前に古本屋に旅立たせてしまったが、これは面白かった。しかし、イーガンもチャンも同じハヤカワ文庫ではないか!まあそれはどうでも良いけど。ストーリー自体は相変わらず性格の悪い主人公が行く先々の星であこぎな商売を展開するというものだが、一巻に収録されていたス=ウスラムという星でのエピソードの完結編が最後に収録されていて、それぞれ別々の短編集の中にある程度のまとまりを感じさせている。相変わらず豪快な翻訳で、主人公の気持ちの悪い慇懃無礼さが妙に楽しい。物語は良く読むとグロテスクだったり冷酷だったりする物が多く、上記のス=ウスラムの完結編も非常に後味の悪い終わり方をする。しかし、ストーリーの寓意なんてあんまり考えることもないか、というくらいあっけらかんとしたSFで、結局のところとても楽しかった。