ジョージ・R・R・マーティン「タフの方舟 1.禍つ星」

タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF

タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF

いわゆるSF。一つの星の生態系を完全に変えることができるほどの、様々な動植物の種とその培養装置を備えた巨大な宇宙戦艦をたまたま手に入れたタフという商人が、ねじ曲がった自我と傲岸さを持って様々な惑星で大もうけする話。

話はかなり単純で、ほとんど神の力を手に入れたタフという男が、金儲けや嫌がらせにその力を行使する、なかなか悪趣味な小説。七編の短編からなる全二巻の構成で、この1巻には四編が収録されている。話自体はふーんといった感じだが、とにかくストーリがわかりやすく、楽しませてくれる仕掛けが満載でとても楽しい。またなんと言っても翻訳がすばらしく、無駄に人物の性格設定が強くてホントに原文はこんななの?と思わせもするが、つまらない訳文より遥かに良い。主人公の微妙な性格付けも、この訳文の調子があってならではという感じ。しかし、性格の悪い人物はいっぱい登場するのだが、あまり清々しい人物が登場しなくて面白い。また、そのあまりの悪人さに心から憤りを感じてしまったりして、すっかり作者にやられたなあと思いながら読んだ。