アーロン・エルキンズ「呪い!」

呪い! (ハヤカワ・ミステリ文庫)

呪い! (ハヤカワ・ミステリ文庫)

白骨化した骨格から生前のその人の様子を言い当てることが得意な文化人類学者が、メキシコのマヤ遺跡のサイトで殺人事件に巻き込まれる話。

なんだか異様に読書量が増えてしまっている。少しでも考え事をしないように、とにかく活字を眺めていようとする自分の心の傾向が感じられる。それはさておき、これは面白かった。法月倫太郎氏が帯で絶賛しているので買ったのだが、やはりはずれなかった。まず物語の構成がよく練られていて、以前スキャンダラスな事件があった遺跡を、その事件現場に居合わせた人々が数年後にまた発掘するという状況のなかで、様々な登場人物や出来事がだんだんと明らかにされてゆく。この構成だけでもなかなか楽しいのだが、これは翻訳者の手腕だとも思うが会話文と文章全体の調子がとても通りが良く、翻訳的な固さがないにもかかわらず英語的な饒舌さと軽さが感じられて、とても気持ちがよい。登場人物とか殺人動機とか主人公夫婦のくだらない会話とか、全てが馬鹿馬鹿しくてとても良い。心が安まる。