有栖川有栖「虹果て村の秘密」

虹果て村の秘密 (ミステリーランド)

虹果て村の秘密 (ミステリーランド)

推理小説家になりたい男の子(親は刑事)と刑事になりたい女の子(親は推理小説家)が、田舎の村で殺人事件に遭遇するだけの話。

「かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド」シリーズの一つ。これはつまらない。このシリーズで初めてつまらない作品を読んだ。理由はなぜか考えると結構面白くて、まずこの作者は子供向けと言うことを意識して物語を作ったのだろうが、まず作品そのものが「子供向け」という枠組みをはずした場合、読むに耐えない。ストーリーは凡庸で、文章も中途半端な感がある。同時にこの作品をもっともつまらなくしているのが、この作品が「子供向け」であるというところで、上記のような作品としての詰めの甘さが感じられるとともに、教条的というか、妙に啓蒙的なところが鼻につく。しかもそれが、「ミステリ」と「ミステリー」の使い分けに関する蘊蓄だったり、「推理小説とはかくあるべきものである」みたいなところなので、ますます興醒めしてしまう。しかし、こんな展開で犯人を特定させるなんて、子供を馬鹿にしているとしか思えないなあ。あっさり犯人がわかってしまった後は後味の悪い動機が語られるのを待つしかなく、もう労働みたいに読まなければならない。ジャンルという形式にとらわれすぎた場合どんなに物語がつまらなくなるかと言うことを学ぶには良い教材かもしれない。