山田正紀「美しい蠍たち」

美しい蠍たち (トクマ・ノベルズ)

美しい蠍たち (トクマ・ノベルズ)

遺産相続を巡る悪巧みに巻き込まれた女性が、10年前の犯罪を暴いてゆく話。

「嵐の山荘」的なシチュエーションで、一人の高齢の女性を罠にはめようとする二人の女性と、それに巻き込まれた一人の女優の卵がだまされたりだまし返したりする。後書きに作者は「思い切り人工的な、作り物のミステリーを書いてみたいと思いました」と書いているが、作り物と言うよりはむしろ2時間ドラマ用の脚本みたいで、どうも薄っぺらい。キャラクターも物語も非常に典型的で、ある程度先行きが予想できてしまい面白くない。山田正紀でここまで普通な作品をあまり読んだことは無く、ちょっと意外でした。因みにこの作品は、本郷三丁目のやたら奥行きの深い古びたモールの一番奥にある古本屋で発見。最近は気になる古本屋では山田正紀の有る無しを必ずチェックしているのだが、山田正紀を蒐集したいというよりは古本屋を楽しむために山田正紀を利用している感じ。山田正紀は基本的に古本屋でしか手に入らないのでちょうど良いのです。先日の古本屋は、狭い面積に本が置かれすぎ、積み重なった本をいちいちどかして下にある本のタイトルをチェックする必要があるような、とても楽しい店舗でした。