南條竹則「満漢全席」

満漢全席―中華料理小説

満漢全席―中華料理小説

文学賞次席入賞の賞金で、中国杭州で満漢全席を開催する話(おそらくかなりの部分でドキュメンタリーだと思われる)と、その他小編が6編。

満漢全席については、今までの中華料理小説と同じ雰囲気。というかおそらくこの小説から南條先生は中華料理小説のスタイルを確立したみたい。相変わらずあれがまずいこれがうまいだの、実にどうでも良い話が繰り広げられてとても楽しい。意外だったのは、南條氏が学生時代に書いた、習作とも言える小編が収録されていたことで、これがまたとっても上手い。学生時代に書かれたとはとても思えない、油と力の抜けた文章で、やっぱり文章の才があるひとは違うなあとうならされた。本郷界隈の描写も、妙に玄妙な雰囲気を漂わせていて良い。この作品にもやっぱり中華料理と猫が登場する。