姜尚中「在日ふたつの「祖国」への思い」
- 作者: 姜尚中
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/03/17
- メディア: 新書
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「しかし、わたしの主張はこうだ。カネで平和を買って何が悪いのだ。正義なき平和と、平和なき正義と、どちらがいいのか。歴史が教えているのは、平和がデモクラシーや正義を生み出すということである。そして平和にまさる価値などどこにもないのだ。人命が失われることこそ、最大の悲劇なのだから。」
全く関係ないが、中学・高校で古代史から歴史を教えることは果たして良いのだろうか。たいてい近現代史にたどり着く前に終わってしまう。なぜ1世紀ごとに20世紀から後戻りする形で教えてはいけないのだろうか。南北朝以前なんてむしろ「国語」で教えれば良い話ではないか。近現代史を見つめることこそ、近代以降の国民国家にまつわる悲劇、それはとりもなおさず国民国家間での争いと国民(=民族)国家内部での差別の歴史に目を向けることになると思うのだが。大学に入った当初、高校でまじめに勉強できなかった東アジア近現代史と数学を勉強しようと試み、数学は完璧に挫折したが、近現代史からは多くのことを学び、考え方を揺るがされたことを思い出す。その経験が、ある種の居心地の悪さや不安な感覚、そして目を背けたくなるようなことを考えることが、むしろ正常なことなのだという確信を抱かせた。いったい過去を謝ることのどこが「自虐的」なのか。むしろそれは勇気ある行為であり、尊敬と信頼を勝ち取るもっとも近道であるはずなのに。