笠井潔「ヴァンパイヤー戦争(ウォーズ)10 魔神ネブセシブの覚醒」

相変わらずあまりやる気のない主人公が、それでもハードボイルド的なマッチョさをいやいや発揮しつつ進む荒唐無稽なSFアクション第10巻。これで残りはあと1冊。長い道のりだった。

物語は混沌を極めよくわからなくなってしまっている。しかし、あまり登場人物を増やさないという作者の戦略(おそらく)が功を奏し、どんな結末でも収束できるような雰囲気が作られつつある。しかし、この巻はある意味ストーリーの整理に当てられたためか、主人公は延々幽閉され続け、そのそばで各種の登場人物が延々と状況説明的なせりふをしゃべり続けるという、妙な展開が続く。普通殺そうと思う相手の前で、その意図を延々しゃべったりするのだろうか。そのような状況に居合わせたことが無いのでよくわからないのだが、しかし、どんなに状況が絶望的でも主人公が助かるという展開になれてしまい、全然興奮しない。むしろ心穏やかに、主人公が死にそうな場面を読み進めることが出来る。水戸黄門ってこんな感じなのかなあ。よくわからないが。