藤岡真「ギブソン」

ギブソン (ミステリ・フロンティア)

ギブソン (ミステリ・フロンティア)

早朝ゴルフのお迎えの車を待つ間に失踪した部長を、迎えに行った部下が探す話。

主人公が部長の家の前で、家の前の3本の道のうち部長はどの道を行ったか悶々と悩んだりする。事件自体が極めて地味で、はっきりいってどうでも良い。小説を読んでいてこんな気分になることは稀なので、その意味では面白かった。加えて、いろいろと差し挟まれるエピソードは、最終的にはほとんどが事件自体とは全く関係がない。この手のエピソードをどんどん挟めば、枚数を2倍にも3倍にも出来そうである。これは小説というよりは、ゲームかテレビドラマのプロットを装飾したものに近いのではないか。文中にも言及されるように「ゲーム感覚」のミステリを書きたかったのだろうが、あまりにも古くさい。これでは「ポートピア」とか「オホーツク」の時代だよ。この「ミステリ・フロンティア」というシリーズは、結構新しい感覚の作品が多かったのに、このような作風のものが出てくるとは思わず、意外だった。