太田忠司「月読」

月読(つくよみ) (本格ミステリ・マスターズ)

人が亡くなると「月導（つきしるべ）」というオブジェが現れ、そこから死者のメッセージを読み取ることが出来る人を「月読」と呼ぶ世界で起きる殺人事件の顛末。

やはり太田忠司氏の読ませる力は大したもので、一気に最後まで読み通すことが出来た。ミステリーとしては上記の設定をふくめた２，３の仕掛けはそんなに力強く働いているわけでは無く、なんだか釈然としないところも残るのだが、それぞれの登場人物に知らずと同情したり腹をたてたりしていたりして、やっぱり物語作家としてこの人は一流だと感じる。でもなあ。最後の仕掛けはあんまり意味がわからないし、必要があったのか。また、恩田陸氏を筆頭に、最近この手の家族／血縁にまつわるミステリーで、成功していると思う物が少ない。矢口敦子氏の「家族の行方」があまりにもすごかったせいかなあ。