モブ・ノリオ「介護入門」
- 作者: モブ・ノリオ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/08/26
- メディア: 単行本
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とても面白くなかった。いや、芥川賞がこんなに面白くないはずがない。なにか、見落としているところがないのか、考えてみなければ。
まず、主人公の男が変だ。自分が駄目人間であることを認めているのに、親戚をけなし介護している自分を褒め称え続ける。働かないで大麻吸ってるなら、中島らも氏みたいに「普通」の立派さを素直にみとめてもいいのに。次に、物語にのめり込むことが出来ない。文章が中途半端に凝っていて、逆にスピード感とグルーブ感が失われてしまった気がする。「俺」という一人称を使うなら、初期の舞城王太郎氏のような切れがないと、読んでいて恥ずかしい。また、朋輩にニガーってふりがなが振ってあるが、いったいこれはなんのことなのか。この主人公にはアフリカ系アメリカ人の血が混じっているのか。その記述はどこにも無いが。後は、というか結局のところ、心が勇気づけられるということが無い。暗い情念を鬱々と読まされている感じ。ブログ読んでるみたいで、そこが選考委員にうけたのかとも思う。しかし、怖いもの無く満たされた人の暗さには、入り込みにくい。玄月氏のような、救いがたい暗さはなぜか救われる気がするのに。
こう考えてみると、そこそこ面白かったのかもしれない。いろいろ考えたし、最後まで読めたし。さすが芥川賞。