モブ・ノリオ「介護入門」

介護入門

介護入門

30前の母親と暮らす無職の男が祖母の介護をしながら主に親類を毒づく話。

とても面白くなかった。いや、芥川賞がこんなに面白くないはずがない。なにか、見落としているところがないのか、考えてみなければ。

まず、主人公の男が変だ。自分が駄目人間であることを認めているのに、親戚をけなし介護している自分を褒め称え続ける。働かないで大麻吸ってるなら、中島らも氏みたいに「普通」の立派さを素直にみとめてもいいのに。次に、物語にのめり込むことが出来ない。文章が中途半端に凝っていて、逆にスピード感とグルーブ感が失われてしまった気がする。「俺」という一人称を使うなら、初期の舞城王太郎氏のような切れがないと、読んでいて恥ずかしい。また、朋輩にニガーってふりがなが振ってあるが、いったいこれはなんのことなのか。この主人公にはアフリカ系アメリカ人の血が混じっているのか。その記述はどこにも無いが。後は、というか結局のところ、心が勇気づけられるということが無い。暗い情念を鬱々と読まされている感じ。ブログ読んでるみたいで、そこが選考委員にうけたのかとも思う。しかし、怖いもの無く満たされた人の暗さには、入り込みにくい。玄月氏のような、救いがたい暗さはなぜか救われる気がするのに。

こう考えてみると、そこそこ面白かったのかもしれない。いろいろ考えたし、最後まで読めたし。さすが芥川賞