恩田陸「まひるの月を追いかけて」

まひるの月を追いかけて

まひるの月を追いかけて

登場人物と主人公の位置決めをめぐる三人の女性と一人の男性の奈良の旅行記

「六人目の小夜子」「木曜組曲」「ネバーランド」等々、いつもいつもこの作家の作品には決して期待を裏切らない手応えと満足感、安心感を感じる。間違いなく、現代の作家の中では最も力のある作家の一人である。しかし、最近は少し雰囲気が変わってきた気がする。端的にいえば、物語ありきでいままで書かれてきたような気がするのだが、最近は雰囲気ありきで、その肉付けとして物語が使われているような感じがしてならない。この作品も完成度は高く、楽しめたのだが、残念ながら物語自体の強さがあまり感じられない。「ライオンハート」のような、あざといぐらいに物語の力を素直に楽しめる作品の方が、好きだなあ。