南條竹則「酒仙」

酒仙 (新潮文庫)

酒仙 (新潮文庫)

南條大先生が第5回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞された作品。身を持ち崩して酒風呂で溺れ死ぬ所を仙人に救助され自ら仙人となった男が、人間の個別の意識の根底にある「アラヤ識」の孤独を増長させる「魔酒」を流通させようともくろむ三島酒造と対決する話。

全編にわたって酒に対する愛情がうたわれる。とことんまでに荒唐無稽でいってしまえばくだらないのであるが、それをここまで見事な文章と学識で展開されると何も言えずただ話に引き込まれてゆくのみ。

近所の公共図書館で借りた本だが、おそらく実在すると思われる中華料理屋の名前とおすすめ料理に、誰かが鉛筆で傍線を引いてあるのが面白かった。