小林恭二「首の信長」

首の信長

首の信長

歴史と時代にテーマをとった、奇妙な短編を8つ集めた短編集。

短編はいずれも95年から98年にかけて書かれている。なんというか、初期の緻密な構成と、バブル期のいわゆるポストモダン的と呼ばれた作風が混ぜ込まれていて、一部の作品は相変わらずやり過ぎという感じが強い。しかし全体としてはよくできた話が多く、楽しく読み切れた。

しかし「宇田川心中」のほうが良かったなあ。なにか、遊びだけの言葉にはあまり力がないのかなあ。「カブキの日」でこの作者は本当に高いところに上り詰めたと思ったが、この作品はその直前に書かれたみたいで、なんとなくまだ落ち着いていない。