山田正紀「流氷民族」

流氷民族 (ハルキ文庫)

流氷民族 (ハルキ文庫)

車で引っ掛けそうになった少女は眠り続け、その世話を任せた昔の友人は失踪、その行方を探るうちに冬眠する人種を護る会と根絶する会の抗争に巻き込まれる男の話。

作者あとがきにあるように、24歳の山田正紀が32歳の男を主人公にできるだけ冷徹なハードボイルドを書こうと思って始めたように思えるが、途中で話を盛り上げるのに夢中になってしまい、気がついたら主人公の男が下らない洒落を飛ばしてしまったりしていてとても面白い。しかし、ストーリーと登場人物が乖離してしまっていて、なんだかこの人らしくない習作のような感じの小説。主人公は必要のないキャラクターだったのではないだろうか。