大江健三郎「個人的な体験」
- 作者: 大江健三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1981/02/27
- メディア: ペーパーバック
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大江健三郎らしく陰鬱で重苦しい。文章は初期の安部公房か、またはロシアの文豪のように、人物がどこか演技的で饒舌であり、それを取り巻く状況は奇妙に歪んでシュール。不条理劇を読むかのようだが、全体的な構成の精緻さのためか、最後まで非常に楽しめた。モラルのありかた、書くという行為を通じての自己の慰めと正当化の危うさを、極めて自覚的に把握し、批判的に物語の構成の肉付けとしている感がある。
しかし、咀嚼や糜爛や欺瞞や威嚇や嘲弄や萎縮や繃帯など、画数の多い漢字を多用する。とっても頭良いんだろうなあ。