山田正紀「地球軍独立戦闘隊」

1976年から81年にかけて書かれたSF短編集。現在は「ミステリ・オペラ」、「天正マクベス」等ですっかりミステリーの巨匠たる感があるが、初期のSFも極めて良質。

おそらく商業ベースで書きまくっていたせいか、文章にそれほどの趣味的な味付けは感じられなく、気にせず読めば書きなぐっているかのような文体だが、第2次世界大戦中のドイツ軍兵士の内面描写が白亜紀後期の被子植物裸子植物の覇権争いの導入であったり、「切り裂きジャック」を追いかける新聞記者が悪魔と天使の争いに身を投じつつコナン・ドイルと出くわすなど、完成度の高さはむしろ異常である。この掌編は後年の「長靴を履いた犬」「神曲法廷」を思い出させる。

しかし、若い頃にこのような密度の薄い文章を書き、歳をとるにつれて観念的、叙情的になり文章の密度を着実に上げてくる、しかも売れっ子のエンターテイメント作家も珍しい。普通はどんどん薄くなって、しまいには水のようになってしまうのになあ。