中島らも「人体模型の夜」

人体模型の夜 (集英社文庫)

人体模型の夜 (集英社文庫)

からだの部分に関わるホラー短編を集めた作品集。

「今夜すべてのバーで」とほぼ同時期に出版される。「今夜」が饒舌な語り口の一人称的サイケデリック病院私小説であったのに対し、短いセンテンスで、リズム感のある文章で書かれている。

文章としては「今夜」には及ばないが、大げさだがそれを感じさせない演出、饒舌だが巧妙に抑制された会話のやりとりには、このころの中島らも氏のとぎすまされた感覚が感じられる。

「骨喰う調べ」の中での悪徳墓地セールスマンの話が秀逸。悪徳墓地セールスのエピソードはとても創作とは思えないが、やはりほんとの話なのだろうか。ほんとならば、なぜ知っているのか。