高橋克彦:京伝怪異帖
- 作者: 高橋克彦
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/07/10
- メディア: 文庫
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高橋克彦氏とは、名前はとてもよく聞いたことがあるし著作が並んでいるのもよく見かけるのですが、いままでほとんど読んだことがありません。おそらく、「写楽殺人事件」があんまりぼくの趣味にあわなかったんだろうなあ。しかし、本作はまったくそのイメージを払拭する、とても爽快な一作でした。
基本的には、なぜか伝蔵の周囲に発生する怪異現象に、懐疑主義者の源内が筋道をつけ、伝蔵たちがしかけをあばくというもの。物語としては極めて安心して読むことのできる構成で、しかもその文章の落ち着きと巧みさには高いプロフェッショナリズムを感じます。またなんだか面白いのは、怪異現象がすべてしかけというわけでもなくて、どこかにやはり割り切れないものが残るという筋立てが、全編を通して貫かれているところです(怪異現象のみではなしが進む部分もありますが)。
また、ものがたりのそこここにちりばめられた作家や絵師、地名や江戸風俗なども、とても自然に展開されていて、物語の世界に楽しく浸ることができます。どうやらシリーズものらしいので、これから少しずつ読んでみなくては。