ジェイ・エイモリー:海賊船ベヘモスの襲撃 翼のない少年アズの冒険2

海賊船ベヘモスの襲撃 翼のない少年アズの冒険2 (創元推理文庫)

海賊船ベヘモスの襲撃 翼のない少年アズの冒険2 (創元推理文庫)

大惨事があったあとの地球のようなところで、空高くに存在する「天空都市」には翼を持った人々が、地上には普通の人間が暮らしている世界が舞台。前作では、地下資源を地上人から搾取し続ける人々と、その歪んだ構造がひきおこしそうになった大惨事を、天空都市で生まれたにもかかわらず翼を持たない身体で生まれた少年アズがくいとめる顛末が描かれました。本作では、以前の搾取生活を懐かしむ天空人が、海賊となって地上の人々を襲うために生じたトラブルを、またもやアズが解決します。
おかしいなあ。。前作はとても面白いと思って読んだのだけれど、本作は全然つまらない。エピソードが単調に大袈裟というか、文章の身振りは無駄に大きいのだけれど、感情が伝わってこないというか。ぼくはこのような対象年齢のいくぶん低いと思われる、単純な勧善懲悪の冒険物語は大好きなのだけれど、おそらくその良さってけっこう複雑だと思うのです。例えばというと、さっと思い出せるのは江戸川乱歩怪人二十面相シリーズとか、トーベ・ヤンソンの「ムーミン谷」とかだけど、どちらも難しいですよね。
本書のように、「驚く」ために「驚かせる」、「安心させる」ために「安心させる」意図が見えてしまうのは、どうなのかなあ。作者が物語をコントロールできているようで、じつは物語が作者から物語が離陸できていない、それだからこそ当然読み手の心にも届かない、そんな気がしました。最後のあまりにわざとらしい幕切れも、同じ意味で興醒めだなあ。