青木淳悟:このあいだ東京でね

東京やその郊外に関して、おもったことをただただ綴った文章を集めたもの。小説のようにも見える。

おそらく筆者は面白くないことを面白くなく書いてみたかったのだと思う。その意味で、筆者の狙いは充分に成功している。それ以上でも以下でもないとは思うのだが、本書の主題として東京、もしくは大都市とその近郊が扱われているということは、少し考えさせられた。新潮社の書籍紹介には、以下のように書かれている。
「マンションの募集広告、江戸時代の旧町名、交通法規と道路標識、猫の生態、そして大手検索サイトの「ストリートビュー」機能まで。今最も注目される新鋭が、恐るべき手さばきで組み立てていく、誰でも知っている、でも誰も見たことのない、ぼくらの街の新しい見取り図。表題作を含む全8篇を収録。青木ワールドを堪能できる作品集。」
だからこそ本書を手に取ったのだが、だからこそとても違和感を持った。本書には、街にたいする筆者なりのまなざしやことばなどはまったく感じられなかった。ただただ、ありうべき街の姿を、使い古され陳腐というしかない、ありきたりのことばで積み重ねてゆく、そんなやりきれない閉塞感とアパシーにも似た倦怠感が、本書にはあふれている。おそらくそれが筆者の描きたかった世界なのだと思うし、それはそれでとても素晴らしいのだけれど、この紹介文はひどい。ちゃんと内容を読んで、きちんとした紹介文を書いてもらわないと、届くべき読み手にきちんと届かないのではないかなあ。

このあいだ東京でね

このあいだ東京でね