閑話休題:オープンハウス「国立の家」(MDS一級建築士事務所/森清敏+川村奈津子)

僕が助教を勤める研究室の卒業生で、今は非常勤講師として教えていただいてもいる森清敏さんより、「国立の家」オープンハウスのお知らせをいただき、本日お邪魔して参りました。
(森さんのHPはこちら:MDS一級建築士事務所






延床面積が約20坪とのことで、とても小さな空間をどのように豊かにつくりあげるのか、ということが設計の大きな指針だったように思います。

実際に見てみると、水廻りのある1階は収納家具で間仕切り、また2階は大きな1室空間として計画されています。加えて2階の床はおそらく400mm程度1階の梁天端より持ち上げられ、その中に2カ所、矩形に切り取られた部分はその下のレベルに掘り下げられ、そこを通じて1階とつなげらています。

森さんのお話を伺い、また自分の目で見て感じた全体のとても不思議な素敵さは、いったいどういうことなのか、考えながら帰途についたのですが、おそらくこういうことなのではないかと思いました。

森さんの手法は、平面計画上で空間を区分けするのではなく、平面自体(つまり2階と1階を分ける床)にボリュームをあたえ、その操作によって2階の空間、そして1階と2階をつなぐ空間をつくりだしています。そのことによって、建物全体を一体として感じられるような、とても伸びやかな空間を実現させているのですが、それと同時に、建物のどこにいても空間の立体感が伝わってきます。これは、感覚としてとても気持ちがよい。

しかもそのボリューム感を、平面計画によって生み出すところに、森さんの計画の力強さがあります。建築を勉強していると、すぐスタイロでボリュームを切り出して、積み木みたいに積み上げ空間を設計した気になるのだけれど、でもおそらくそうではない。そこには、空間の輪郭があるだけで、本来あるべき密実な空間の経験が、むしろ読み取れないのかも知れない。またその空間のボリュームって、ある時にはあるかたちを、またある時は違うかたちをとることができるのだ、ということを、この「国立の家」には感じさせられました。

(*デジカメ忘れてしまって携帯で写真を撮ったため、光が足らず暗い写真になってしまいましたが、本当は光と風の通り抜ける、明るい建物です。森さん、本日はありがとうございました。)