ロイス・マクマスター・ビジョルド「親愛なるクローン」

親愛なるクローン (創元SF文庫)

親愛なるクローン (創元SF文庫)

デンダリィ自由傭兵艦隊の提督という裏の身分を持つマイルズ・ヴォルコシガンは、様々な要因により二重身分がばれそうになり、あわてて自分にはクローンがいてという説話をでっち上げるのだが、それが思わぬ波紋を呼び大変なことになるはなし。

とても面白かった。とても面白かったのだが、再読してみた感想としては、初読ではとても面白かった記憶があるのだが、今回呼んでみたところ、はなしが複雑すぎてさっぱり分からない。こんな複雑なはなしがなぜすらすらとわかったのか、あのころの自分はとても頭が良かったのか、それとも今の自分の脳細胞はずいぶんと死滅してしまったのか、なんだか複雑な気分がする。それはそうと、やっぱり落ち込んだ時にはビジョルドが良い。この、アンチ・ヒーロー的な展開は、とても心安らぐものがある。基本的には勧善懲悪的な予定調和な物語なのだが、なにか不思議なものがあって、それは、おそらく主人公がとてもマッチョとは正反対の人格であったり、宇宙ドンパチ物語と思いきや架空の政体による政治的・法律的判断の解釈に多くの頁が割かれたり、物語の結末がとても納まりがよいとは思えない収束を向かえたりするところにあると思われる。とにかく、話の展開は複雑で、結末自体もまったくもってすっきりしないのだが、この面白さと感動は何なのだろうか。とにかく、疲れた時にはビジョルドなのである。