森福都「漆黒泉」
- 作者: 森福都
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/09/07
- メディア: 単行本
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物語的にはとても面白いと思うのだが、なにかのめり込めないものがあるのはなぜなのだろうか。おそらく、視点をめまぐるしく展開させる手法を取っている割には、それぞれの人物の視点の掘り下げが浅く、なんとも物足りないためであろう。不思議と超然としているように見える少游は、読めば読むほどただの馬鹿であり、すぐかっとなる主人公は、まったくもって主人公たるオーラを感じさせない。こんな調子なので、あんまり読み進む気が起きず、気分も盛り上がらない。物語自体もなにか行き当たりばったり感が強く、構築されたものを感じないので面白くない。この作者にしては珍しくのめりこまず、読みきるのに時間を要した作品だった。