コードウェイナー・スミス「第81Q戦争 <人類補完機構>」

第81Q戦争―人類補完機構 (ハヤカワ文庫SF)

第81Q戦争―人類補完機構 (ハヤカワ文庫SF)

何を血迷ったか懐かしの名作SFを読んでみた。人類が滅び去った後に広がる一種異様な世界に、衛星の中でコールドスリープしていた女性が降り立ち、<人類補完機構>を形成してゆく話や、その後の科学技術の発展の中で星間旅行中に起きたアクシデントの話、達磨大師の不思議な笛の話、第2次世界大戦中のロシアでの異様な実験の話、死んだ男が死んだ後に衛星に託したメッセージをめぐってKGBFBIが大混乱に陥る話など、小編を集めたもの。


ずいぶん昔に読んだものをもう一度読んでみるというのはなかなか面白い経験で、昔は面白いと思ったのだが今は全然面白くなかったり、逆に昔は楽しめなかったものが非常に面白かったりする。その意味ではこれは期待はずれで、以前はあんまり面白くないけどそこそこと思ったのだが、今回もそう思った。どうもいろいろ集められているためか、全体的にまとまりがなく、作風にも幅がありすぎるため読んでいてちょっと疲れる。でも、この幻想的で流れるような、また理解不可能なことばの連なりは相変わらず心地よく、なかなかほかでは感じることのできない世界が感じられることも確か。童話風でもあるが寓話的でもあり、SF的でもあるが幻想小説的でもある。この捉えにくさは諸刃の刃となり、傑作と駄作を次々に生んでしまう。記憶では「ノーストリリア」は傑作だったような気が。これも縁だからこんど読んでみよう。