芦原すなお「ハート・オブ・スティール」

ハート・オブ・スティール

ハート・オブ・スティール

探偵であった配偶者が愛人と心中したことから探偵を始めた女性が出会う事件の顛末。彼女の仲間の探偵のふーちゃんはピンチになると死んだ妻から妄想の中で電話がかかってくる。そんなはなし。

この作家はいろいろつまないなと思う作品を読んだ後で、「月夜の晩に火事がいて」をよんで、背筋がふるえる異常な感覚を感じた。その小説は上記の「ふーちゃん」という探偵が主人公なのだが、とにかく暗い。全編に死のイメージが漂う。だって、主人公がピンチになると、死んだ妻から電話がかかってくるんですよ。しかも作品自体はくだらない冗談でいろどられ異常に明るい。そんな小説にすっかりやられてしまい。これはただごとではないと思い読んだ作品がこれ。この作品もただごとでは無い。全部で四編の事件からなるのだが、全ての事件が後味の悪い終わり方をする。しかも主人公が一番傷ついてしまう。しかし、このカタルシスは、なんとも言い難い。この作者は決して楽しんで書いていない。明らかに破滅型としか思えない。しかし、それがなんと美しいことか!願わくば、末永く書き続けて下さい。死なないように。