日明恩「それでも、警官は微笑う」

それでも、警官は微笑う (講談社ノベルス)

それでも、警官は微笑う (講談社ノベルス)

暴力刑事とゲイっぽいマザコン刑事が銃密輸ビジネスにいそしむ中国人ブローカーを捕まえられない話。

文章はなんとなくこなれているのだが、おそらく刑事ドラマか映画をよく研究されて書かれたのか、登場人物がステレオタイプ的で意外感がなく現実感もない。それぞれの登場人物が、あらかじめ振り分けられた属性を充分に把握して行動しているかのような、妙な雰囲気がある。構成はいろいろ盛り込みすぎている感があり、例えば麻薬取締官(?)のエピソードは読んでいる間はそれほど違和感がないが、読み終わると無理に接ぎ木された感がある。文章の雰囲気もある場所では喜劇的な一方で、他方では「ハードボイルド」調だったりと、落ち着きがない。作者の紹介を読んだらこれがデビュー作とのことで、それにしてはとっても上手で感服するが、だからといって読むことが楽しくなるわけではなかった。