松尾由美「雨恋」
- 作者: 松尾由美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/01/26
- メディア: 単行本
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創原推理文庫で「ブラックエンジェル」を読んだときには二度とこの人の作品は読まないと思ったが、その後何となく読んだ「バルーンタウン」関係のミステリーが秀逸というほか無く、手当たり次第「銀杏坂」や「スパイク」や「安楽探偵椅子アーチー」を読んだらことごとく面白い。この作品も、「ピピネラ」でちょっと失いかけた信用を見事に取り戻す出来で、とても面白かった。相変わらず、非常に繊細な言葉遣いの積み上げが、針金細工のような美しい世界を作り上げ、とても気持ちが良い。猫が素敵な役割を振られてもいて、猫好きにはたまらない。今年の本屋大賞は恩田陸氏の「夜のピクニック」だったそうだが、来年は是非この本に受賞してもらいたいものだ。しかし、昨年の「博士の愛した数式」といい今年の受賞作といい、本屋大賞はなにかピントの甘い小説が取るようで、なんとも面白くない。本屋大賞とは関係ないが、この本の帯はいったいいかなることか。「ありえない恋 ラスト2ページの感動」って、なんなんですか。物語がかわいそうなくらいひどいコピーだよ。なんだかラスト2ページまでは感動しないみたいだし、「感動のお話」なんていわれる話はそもそも感動出来ないことを確信してしまう。とっても良い本なのに。