深水黎一郎「ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ！」

ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス)

おそらくそこそこ実績があると思われる小説家の元に、最高のトリックを売りつける手紙が速達で届く。その後も同様の手紙が届き、同時に麻薬売買に関わる殺人事件に関して、様々な出来事が起こり始める。

思わせぶり過ぎるタイトルにまったく買う気が起こらなかったのだが、それでもやっぱりメフィスト賞だからなんらかの異常さがあるはずだと思い読んでみたのだが、あんまりメフィスト賞っぽくなくって肩すかしにあった気分がした。基本的には「新本格」派の一つの変奏とも言える内容だが、なんだかちょっと古くさい。東野圭吾氏に似た雰囲気がするというか、なんだかおとなしいというか。文章は流麗で構成もしっかりしているのだが、しかしそれ以上の迫力に欠ける感じがする。実力派作家が、小手先で書き上げた、まとまりのよい作品という感じ。物語の仕掛け自体はなかなか大がかりで豪快なのだが、それを踏まえた上で最初の方の文章を読んでみると、あれっという感じがしてしまうのはなぜだろうか。物語の構成に凝りすぎたあまり、物語としての鋭さというか、勢いが失われてしまった感じがする。超能力に関する挿話は、気持ちは分かるが強引ではないか。全編そんな感じがしてしまう。なんだかけちをつけているようだが、思い返してみるとそうでもないような気がするから不思議なものだ。しかし、タイトルは品がないよなあ。。編集部に決められたのだろうか。